研究概要 |
シロイヌナズナのシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)mRNAと大腸菌コリシンDとE5によるtRNAの分解制御機構の解析を行った。CGS mRNAはS-アデノシルメチオニン(SAM)存在下ではSer-94の位置で特異的な翻訳停止を起こし,これが引き金となってmRNA分解が引き起こされる。コムギ胚芽抽出液の試験管内翻訳系において翻訳停止産物の蓄積が最も多くなる翻訳開始後30分ではmRNA分解中間体はほとんど検出されないが,翻訳伸長阻害剤を添加してインキュベーションすることにより,mRNA分解中間体が検出された。このことは,翻訳停止自体がmRNA分解を引き起こしていることを示すと考えられる。H17年度の研究で,CGS mRNA分解中間体は約30塩基ずつ離れて複数個が検出され,これが最初に停止したリボソームに後続のリボソームが「追突」下状態に対応しているとの考えを示したが,翻訳停止産物の解析により,このことが裏付けられた。また,コムギ胚芽抽出液でRNaseの働きを阻害するとされるポリGを添加した解析により,少なくとも最初に停止したリボソームに対応する3'側のmRNA分解中間体に対応すると考えられる5'側の断片が検出され,エンドヌクレアーゼによる切断であることが強く示唆されれた。 Tyr, His, Asn, AspのtRNAに特異的な大腸菌ヌクレアーゼであるコリシンE5の構造と基質認識を解析した。コリシンE5はジヌクレオチドGUをよい基質とするが,基質ポケットの空間制約が,上記4種のtRNAの,GUを含むアンチコドンループへの高い特異性を与えることを見いだした。tRNA(Arg)に特異的な大腸菌ヌクレアーゼであるコリシンDの出芽酵母中とHeLa細胞中での発現に伴う細胞応答について,DNAマイクロアレイ解析によりtRNA傷害が酵母の接合機能を昂進することを見いだした。
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