E4orf6はアデノウイルス感染時に宿主細胞やウイルスのmRNAの輸送を制御し、細胞がん化活性も持つウイルスタンパクである 我々はこれまでにE4orf6がpp32とめ結合を介して、本来CRM1依存的に核外輸送されるAU-rich element containing mRNA( ARE-mRNA)をCRM1非依存的に輸送することを報告した。またE4orf6のoncodomainがARE-mRNAの輸送や安定化に重要な働きを持ち細胞がん化に寄与していることを解明した。その後E4orf6のこの機能は、アデノウイルス感染時のmRNAの輸送やウイルス複製に何らかの機能を持っていると考え、いくつかの解析を行った。 まずアデノウイルス感染細胞でもE4orf6とpp32やHuRが結合しているか調べた。その結果がん細胞同様、感染細胞でもこれらのタンパクが結合することがわかった。次に同じ感染細胞ではHuRが標的のmRNAと共に細胞質側に輸送されていることをUV cross link法を用いて見出した。さらに同細胞ではc-fosなどのARE-mRNAも核外輸送されていた。これらの現象はE4orf6を欠失したアデノウイルスを感染した細胞では起こらなかった。またRNAi法によりHuRをノックダウンすると、たとえE4orf6が細胞に存在してもARE-mRNAの核外輸送が阻害され、ARE-mRNAに直接結合するHuRが核外輸送に必須であることがわかった。そしてHuRをノックダウンすると、ウイルス粒子の産生効率も落ちることが判明した。 以上の結果は、アデノウイルス感染細胞でもARE-mRNAが核外に輸送されており、HuRを介したARE-mRNAの核外輸送がウイルス粒子の産生に重要であることを示唆している。
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