研究課題
(1)ポリA鎖分解機構の解明翻訳終結からmRNAポリA鎖分解の開始に至る分子メカニズムを明らかにした。すなわち、翻訳終結因子複合体eRF1-eRF3、ポリA鎖分解酵素複合体PAN2-PAN3、CAF1-CCR4はどれもPAM2モチーフを共通に有しており、3'末端ポリA鎖結合蛋白質PABPのPABCドメインに競合的に結合すること、翻訳終結に伴って翻訳終結因子複合体がPABPより解離し、代わりにポリA鎖分解酵素複合体がPABPに会合することでこれらの分解酵素が活性化され、ポリA鎖の分解が進行することを明らかにした。これまで不明であったmRNA分解開始の分子機構の詳細を解明できたことは学問的にこの研究領域の進歩・発展に大きく貢献するものである。(2)ナンセンス変異型mRNA分解機構の解明ナンセンス変異型の異常mRNAについても解析を行ない、正常なmRNAと同様3'末端ポリA鎖の短縮化にはじまることに加えてeRF3の関与が観察され、正常mRNAと同様な分子機構でポリA鎖分解がおこることを明らかにした。一方で、ポリA鎖分解の途中段階において他の分解経路が発動することも観察され、ナンセンス変異型mRNA特異的な分解機構の存在が示された。5'末端キャップ構造の切断にはじまる分解経路の可能性が考えられる。これらヒト培養細胞を用いた解析に加え、モデル生物である酵母を用いた解析から、ナンセンス変異型mRNAに特異的に結合する因子Ssa1を同定した。この因子はNMDにおいて中心的な役割を果たしているUpf因子群と特異的に結合し、その酵母破壊株はナンセンス変異を持つmRNA特異的な分解抑制を示したことからナンセンス変異型mRNAの分解に特異的に関わる因子であると考えられる。
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