大腸菌において膜内在性タンパク質は、その合成に共役して膜挿入することが知られている。疎水性の強い膜貫通領域はシグナル認識粒子(SRP)とSRP受容体(SR)により膜にターゲットされ、タンパク質膜透過装置(SecYEG)上で膜挿入が進行すると考えられている。SRPは細菌から動物細胞に至るまで、すべての生物に保存されている。大腸菌においては、SRPはFfhタンパク質と4.5S RNAにより構成されている。我々はMtlA(膜を6回貫通)を膜挿入基質として膜挿入反応の再構成系を確立した。その結果、MtlAの膜挿入にはSRP/SRとSecYEGのみでは不十分であることが判明した。膜挿入反応に関与すると考えられているYidCの添加によってもMtlAの膜挿入は観察されなかった。再構成系を利用してMtlAの膜挿入に必要な因子を検索・精製したところ、SDS-PAGE上で約8kDaの因子を細胞質膜から得ることができた。すなわち、MtlAの膜挿入はSRP/SR、SecYEG、本因子により再構成することができた。この因子はペプチド、糖、脂質を含む化合物であることが判明し、現在構造解析中である。膜挿入反応における4.5S RNAの詳細な機能解析を行うため、まず4.5S RNAをコードするffs遺伝子破壊株を構築した。プラスミド上でffs遺伝子をアラビノースプロモーター支配下に連結し、染色体上のffs遺伝子破壊を行ったところ、生育はアラビノース依存であった。このことは、報告されている通りffs遺伝子は生育に必須であることを示している。この菌を用いて4.5S RNAを枯渇した試験管内タンパク質合成を構築し、再構成系をもちいた4.5S RNAの機能解析を行っている。
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