昨年度にひきつづいて、シロイヌナズナを舞台に、RNAを介した遺伝子発現制御の分子機構を解析した。マイクロRNAの合成経路に関与する因子の解析と、mRNAのナンセンス介在分解系(NMD)の機構についての解析を加えた。 マイクロRNAは、いったん数百塩基長からなる前駆体RNAが合成された後に、2段階あるいは3段階の特異的な分解反応をうけ、最終的に18-24塩基長の短いRNAが完成する。この特異的な分解に関与するのは、Dicer-likeタンパク質1(DCL1)であることをすでに示しているが、本年はそのDCL1とHYL1というタンパク質が相互作用することが、マイクロRNAの正確な切断を担保する上で重要なことを、hyl1の突然変異体、およびdcl1-9突然変異体の解析、および異所的発現させたタンパク質をもちいた免疫沈降実験によって明らかとすることに成功した。 植物にもNMD現象が存在すること、AtUPF3という遺伝子産物が関与することを明らかとした。多くの通常の遺伝子から複数のスプライシングバリアントが生まれた後に、Premature termination codon(PTC)を含まず、フルに機能を果たすタンパク質を発現するmRNAを活かすために機能していることが示唆された。アクチノマイシンD処理をしたうえで転写をとめると、PTC+のmRNAの増加が見られた。シクロヘキシミドで翻訳をとめると、PTC+のmRNAの分解もとまることが観察され、他の真核生物でいわれているNMDの機構と非常に相同であることが結論された。
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