研究概要 |
哺乳類の遺伝子には長大なイントロンが複数個挿入されている。それらは転写後にRNAスプライシングの機構によって正確に切り取られ、成熟mRNAが形成される。本研究では、このRNAスプライシング反応時に特異的にイントロンに結合し、スプライシング反応後のイベントに関与するIBP160という因子の同定と、その機能解明を中心に以下の成果を得た。 1.研究開始時にp160と名付けていたイントロン結合タンパク質の正体を部位特異的UVクロスリンク法と免疫沈降を組み合わせた方法で明らかにし、これまで機能未知のスプライソソーム因子でRNAヘリカーゼ様モチーフを持つタンパク質であることが明らかになった。この因子をIBP160(Intron Binding Protein 160kDa)と命名した。 2.IBP160のイントロン上の結合部位を詳細にマッピングし、ブランチ部位上流の33〜40塩基上流の限られた領域に位置特異的/配列非依存的に結合することを見出した。またその結合はスプライシング後期ステージのC1複合体において起こることも実験的に証明した。 3.RNA干渉によってIBP160を除去したHeLa細胞から核エクストラクトを抽出し、in vitro反応を行うことによってスプライシングとカップルして生合成が起こるboxC/D snoRNPの会合がIBP160に依存して起こっていることを示した。 4.IBP160とEJC構成因子がC1複合体中で相互作用することを部位特異的UVクロスリンクと免疫共沈降によって発見した。 上記の研究と平行して、RNAの品質管理の研究も行った。品質管理に関わると考えられるhUPF1,hUPF2,hRrp6などをRNA干渉によってノックダウンし、その結果現れるRNAの蓄積パターンの変化を調べた。その結果、複数のnoncoding RNAやU3 snoRNAなどの核内低分子RNAの前駆体量の上昇などを観察した。
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