高等植物の葉緑体では、RNAエディティングによって、転写後にRNA鎖上の特定のCがUに変換される。エディティング部位は葉緑体ゲノムあたり数十カ所あるが、それらの周辺には共通の配列がみられず、個々の部位は、それぞれ個別のシス・トランス因子によって認識されると予想されている。本研究では、タバコ葉緑体から調製したin vitroエディティング系を使って、このエディティングに関与するトランス因子について解析を進めた。 (1)in vitro RNAエディティング系の改良とタンパク質の精製 基本的に廣瀬と杉浦の方法(2001)によってin vitro RNAエディティング系を調製しているが、葉緑体の単離・可溶化の方法等を改良した結果、従来比で500%程度の比活性をもった系を再現性よく調製できるようになった。この系を用いて、エディティング反応の基質飽和濃度などを検討したところ、エディティング酵素は従来の予想よりも多量に存在していることが示唆された。現在、この系を用いてエディティング酵素の精製を進めている。 (2)UVクロスリンク法よるエディティング因子の比較解析 エディティングの標的塩基、またはその近傍のシス因子をそれぞれ放射能標識した基質RNAを調製し、次いで、in vitroエディティング系を用いてUVクロスリンクを行い、上記の標識ヌクレオチドに結合するタンパク質をSDSPAGEで解析した。その結果、psbE-1部位では、標的C塩基とシス因子の双方が同一の56kDaタンパク質によって認識されており、さらに、petB-1部位でも、双方が同一の70kDaのタンパク質によって認識されていた。また、標的C塩基に結合するタンパク質の分子量は、rpoA-1部位、rpoB-2部位、rpoB-3部位ですべて異なっていることが明らかになった。
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