研究課題
本研究の目的は、生化学的手法によって、高等植物の葉緑体RNAエディティング因子を単離精製し、その構造・機能・進化を解明することである。本年度は、以下の成果が得られた。(1)RNAエディティング因子の精製前年度の研究によって改良されたタバコ葉緑体由来のin vitro RNAエディティング系から、psbE mRNAに作用するエディティング因子を含む画分を、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、RNAアフィニティークロマトグラフィー等によって、濃縮・精製した。得られた活性画分を、SDSPAGEによって分離した後、トリプシン分解し、次いで、LC/MS法による質量分析にかけたが、シロイヌナズナのデーターベースを用いた検索では、目的とする蛋白質を同定するには至らなかった。そこで、出発材料をシロイヌナズナの葉緑体に変えて、上記の同様な精製・分析を進めている。(2)RNAエディティング因子のRNase感受性について葉緑体抽出液中のRNAエディティング活性がRNase感受性であることを見出した。RNase感受性を示すメカニズムはまだ不明であるが、RNA成分がRNAエディティングの(1)部位認識、(2)触媒活性、(3)活性の促進、などに関わっている可能性について、現在検討を進めている。(3)部位認識因子の複数部位RNAエディティング部位と部位認識トランス因子との間には一対一の対応関係があると考えられてきた。しかし、タバコのndhB-9部位とndhF-1部位は同一のトランス因子によって共認識されることを明らかにした。この知見は、RNAエディティング部位の進化・多様化のメカニズムを解明する上で、大きな手掛かりになる。
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