RCNMVの翻訳・複製に関わる宿主因子を同定するために必要なin vitro翻訳・複製系を作成した。すなわち、in vivoにおけるRCNMVのキャップ非依存的翻訳とRNA複製をほぼ再現できるin vitro翻訳・複製系(BYL)をBY2培養細胞のプロトプラストを材料にして、Komoda et al.(PNAS 2004)の方法により調製することができた。RCNMV RNA1のキャップ非依存性翻訳機構においてはRNA1の3´非翻訳領域(UTR)に存在するステムループ構造(SL1)が必須であり、RNA1の3´-UTR(RC1-3´-UTR)はキャップ構造の代わりとなると考えられる。RC1-3´-UTRはBYLにおいてRNA1の翻訳活性を阻害したが、SL1に変異を持つRC1-3´-UTRSLmでは阻害効果が弱かった。このことはRC1-3´-UTRはSL1構造特異的に翻訳因子を競合すると考えられた。ストレプトタグをもつRC1-3´-UTRを用いSL1構造に特異的に結合する宿主因子の単離を行っているが、SL1配列に特異的に結合するタンパク質はまだ得られていない。 一方、RCNMVのRNA2のキャップ非依存性翻訳はRNA1の翻訳機構とは異なりRNA複製とリンクしていることが分かった。そこで、RCNMVの複製酵素成分であるp27タンパク質(p27)にエピトープタグを付け(p27-TEP)、RNA複製に関わる宿主因子の免疫学的手法による単離を同時に試みている。現在、p27-TEPに特異的に結合するいくつかのタンパク質があることが分かってきた。RCNMVのRNA複製複合体形成はRNAサイレンシングの抑制とも密接にリンクしているため、本手法による宿主因子の単離同定は、RNAサイレンシング、翻訳、複製ネットワークの解明につながることが期待される。
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