筋強直性ジストロフィーは常染色体優性遺伝病で、筋強直・筋萎縮などの筋症状に加え、白内障、不整脈、糖尿病など種々の全身症状を呈する。筋強直性ジストロフィータイプ1(DM1)はDMPK(dystrophia myotonica protein kinase)遺伝子の3'非翻訳領域に存在するCTGの3塩基繰り返し配列が異常伸長するトリプレット病のひとつである。病気の発症にはDMPK遺伝子転写産物のCUGリピートにスプライシング制御因子がトラップされて、本来のスプライシング機能が障害され特定遺伝子の異常スプライシングを起こすことがわかってきている。DM1患者筋組織からsarcoplasmic/endoplasmicreticulum Ca^<2+>-ATPase 1(SERCA1)mRNAの異常スプライシングがあることがわかり、そのスプライシングのメカニズムについて検討した。今回、SERCA1のイントロン22内にスプライシング調節因子であるmuscleblind(MBNL)蛋白質の結合モチーフを見出した。SERCA1のスプライシングにおけるMBNLの効果を解析したところ、MBNLはイントロン22内の結合モチーフを介して、SERCA1のエクソン22の選択的スプライシングを制御していることが判明した。また、DMPKの伸長したCUGリピートを発現させると、SERCA1のエクソン22のスプライシングが抑制された。さらに、MBNL依存性のSERCA1エクソン22のスプライシングがDMPKの伸長したCUGリピートの発現によりキャンセルされた。したがって、DM1の筋組織ではMBNLの機能が阻害されてSERCA1のエクソン22がスキップするスプライシングを起こす可能性が考えられた。
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