大腸菌の生育が飢餓などにより定常状態に入ると、RMFという蛋白が発現し、70Sリボソームの大部分が二量体化して100Sリボソームへと変換される。この100Sリボソームの形成に対して、RMFと同じく定常期で発現してリボソームに結合するYhbHとYfiAという蛋白がどの様に関与しているのかを調べた。まず、そのためにYhbHとYfiA、およびこれら両方の大腸菌欠損株を作成した。そして、それぞれの遺伝子の欠損効果を蔗糖密度勾配遠心でリボソーム粒子の状態を観察することにより調べた。その結果、YhbH欠損株では100Sリボソームが減少し、YfiA欠損株では100Sリボソームが増加した。また、両方の欠損株では100Sではなく、90Sという沈降係数のリボソーム二量体が観測された。以上の事実より、YhbHは100Sリボソームの形成を促進又は安定化するのに対して、YfiAは逆に70Sダイマーの形成を阻害することを明らかにした。更に、RMFのみによって形成される70Sダイマーは未成熟な90S粒子であり、これにYhbHが結合することによって、初めて成熟した100S粒子に移行することも明らかにした。これらの結果により、100Sリボソームは二段階で形成されることが示され、100Sリボソームの形成機構をさらに詳細に明らかにすることができた。我々は、これらの機能から、YhbHをhibernation promoting factor (HPF)と名付け、データベースに登録した。 これらの成果はカナダで行われたRNA学会で発表され、「Genes to Cells」に掲載された。
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