1分子観察系は、DNAとタンパク質の結合、転写反応等で顕著な成果を挙げているが、翻訳に対してはほとんど成果がない。そこで、1分子観察系の標的を、複合体を構成する成分の脱着の前後関係にして、翻訳終結に絞り、従来論争になっている翻訳終了時におけるリボソーム50S/30Sサブユニットの解離とmRNAの解離との前後関係の決定に絞り込んだ。つまり、翻訳終了時にmRNAは70Sリボソームから解離するか、30Sとの複合体として50Sから解離するのか検討を進めた。 その結果、次の成果を得た。 1.リボソームの表面固定:His-tagged GFP融合リボソームを特異的に固定でき、非特異的吸着の少ない基板として、NTA/cysteineコートされたスライドガラスを開発した。固定されたHis-taggged GFP融合リボソームのは、NTAが固定化してある部位に特異的に固定されることが観察された。この固定化リボソームは、予想通り、250mM Imidazoleにより解離した。したがって、固定は、非特異的ではなく、大部分His-tagとNTAとの結合によることが示された。 2.固定化リボソームの活性:次に、スライドガラスに固定されたリボソームのまわりの溶液から、Mg^<2+>イオンを除去したところ、スライドガラスから、50S粒子に固定されたGFPの蛍光が消失したので、固定化されたリボソームは、50S/30S解離のMg^<2+>イオン依存性を保持していた。 3.1分子固定の証明:スライドガラス上に固定されたリボソームは50SがGFPと融合されているが、このGFPのphotobleachingを行ったところ、蛍光強度は1段階で減少し、中間的な蛍光レベルが観測されず、1分子で固定されていることを示した。 4.固定されたリボソームに、リボソーム以外の翻訳成分を持つ100S画分を加えると、さらにルミオタグをコードしているmRNAを加えたときのみ、ルミオタグの翻訳に伴う蛍光が観察された。 5.さらに、固定化されたリボソームの活性を、S100にコンタミしている可能性が否定できないリボソーム由来の活性から分離するために、タンパク遺伝子に抗生物質耐性があるものを選ぶことが出来た。
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