研究概要 |
1.ヘテロクロマチンに局在するRNA代謝関連因子の解析 本年度は、まず細胞内局在を解析する網羅的なスクリーニングで、ヘテロクロマチン様の局在を示す機能未知の因子TB04につい解析を行い、以下の点を明らかにした。1)TB04はヘテロクロマチンタンパク質Swi6と共局在する、2)TB04の局在はSwi6,Clr4に依存しない、3)TB04と相互作用する因子としてCrb3,Las1,Rix1を同定した、4)温度感受性変異株を解析したところ、TB04の変異体はpre-rRNAのプロセッシングが異常となり、tRNAの異常な蓄積も確認された。以上の結果は、TB04がrRNAのプロセッシングに関わることを示唆するが、ヘテロクロマチン局在との関連を直接示すものではない。現在tRNAやsnoRNAの発現調節を介してrRNAのプロセッシングに関わると言うモデルについて検証を進めている。 2.ヘテロクロマチンに由来するRNA発現・調節機構の解析 分裂酵母では、RNAiに関与する因子が高次クロマチン構造の形成に関与するが、詳細な制御機構については不明な点が数多く残されている。本年度の研究では、二本差RNA特異的な分解酵素Eri-1に着目して解析を行い、以下の点を明らかにした。1)分裂酵母のEri-1が実際に二本差のRNAを特異的に分解する活性を持つ、2)eri1+の遺伝子破壊によってサイレンシングが増強される、3)Eri1の機能が他のRNAi因子に依存し、RNAi経路を介して作用している、4)eri1+の変異で核内のヘテロクロマチン構造の変化が起きている、5)eri1の欠損株では短いsiRNAの異常な蓄積が見られる、6)Eri1もsiRNAも細胞質に局在する。以上の結果は、核内の高次クロマチン構造形成が、siRNAの存在量によって制御される機構を示唆する結果と考えられる。
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