高等植物の形態形成機構を解明するために、シロイヌナズナにおいて、花茎の軸性成長に着目し、花茎の伸長のみに欠損がみられるacaulis(acl)変異、花茎伸長欠損によって花序型が変化するcorymbosa(crm)変異を用い、分子遺伝学的に解析した。 1、花茎伸長欠損突然変異体acaulis1の表現型の分子遺伝学的解析 acl1変異体では花茎長の減少に伴い、細胞長が減少していることが観察された。強い表現型を示すacl1-1変異体では表皮に気孔が観察されず、維管束組織の細胞分化や組織の発達が不十分であった。さらに、篩管に特異的に含まれる物質であるカロースをアニリンブルーで染色した結果、acl1変異体の花茎で篩部以外でもアニリンブルーの染色が観察され、カロースが異所的に蓄積していることから、細胞伸長の欠損とあわせて、細胞壁に異常が生じていると考えられる。生育培地への硝酸アンモニウムの添加によって、部分的な表現型の回復がみられた。 2、散房花序様変異体corymbosa1の表現型の分子遺伝学的解析と遺伝子単離 CRM1遺伝子を単離するためにNARAMAP(奈良先端大・田坂昌生博士、森田美代博士)によるポジショナルクローニングを行った。その結果、crm1変異の原因遺伝子は第3染色体に座乗するBIG遺伝子であることがわかった。BIGはカロシン様タンパク質であり、正常なオーキシンの極性輸送に必要であることが知られている。BIG遺伝子に変異をもつcrm1-1、doc1-1とrlrの12のアリル(doc1-1、rlr;奈良先端大・深城英弘博士より分与)について表現型の解析を行ったところ、散房花序様表現型の強弱の度合い、花茎伸長、根の伸長と側根形成および花芽分化誘導の時期にアリル間の表現型の強弱の差が観察された。現在、これらの変異を用いて、BIGタンパク質の機能部位の推定を行っている。
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