研究課題
(1)AHK5の機能欠損と思われるT-DNA挿入変異体を3種類独立に取得し、共通する表現型を検索した結果、いずれのahk5(cki2)変異体もアブシジン酸(ABA)及びエチレンによる根の伸長阻害作用に関して高感受性を示すことが明らかになった。従って、ABAとエチレンのシグナルが統合して制御されて起こる根の伸長阻害作用に深く関わっていることが示唆された。(2)各Type-B ARRの機能欠損と思われるT-DNA挿入変異体や多重変異体を確立した。サイトカイニンによる根の伸長阻害、根組織断片より誘導したカルスからのシュート形成を指標とした解析、サイトカイニンが負に制御することが知られている細胞レベルの応答(前形成層細胞から原生木部細胞への分化抑制)を詳細に解析した結果、arr1/arr10/arr12三重変異株はサイトカイニン受容体機能が欠損したwol変異体と同様の表現型を示すことが観察された。これらの結果より、ARR1、ARR10、ARR12のコンビネーションがこれらのサイトカイニン応答に正に働く制御因子として深く関与していることが明らかとなった。(3)サイトカイニン情報伝達下流で機能する遺伝子の候補として、AS2/LOBファミリーに属するASL9に関して解析した。ASL9::GUSを用いて、ASL9の発現を詳細に解析した結果、既に報告されているLOBの発現パターンと同様、分裂組織と側成器官との境界面で特異的な発現を示すこと、リン酸リレー情報伝達系に依存したサイトカイニン誘導を示すことが明らかとなった。また、ASL9の構成的過剰発現体は生長と分化において顕著な異常(全体として綾小、葉において上偏成長)が生じることを見いだした。以上の結果から、ASL9はAS2/LOBファミリーの中で特徴的な因子であり、サイトカイニンが制御する生長と分化の調節に関わる可能性が示唆された。
すべて 2007
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Plant Cell Physiol. 48
ページ: 110-121
ページ: 84-96
ページ: 375-380