高等植物においてABCトランスポーターは、最も大きなサイズをもつ遺伝子ファミリーの一つである。その内、フルサイズABCタンパク質であるAtPGP4は、根で特異的に発現する分子種であり、その発現も主に表皮細胞で強いことをこれまでに明らかにしていた。今年度は、その発現が根冠の細胞においても高いこと、また根の基部においては皮層においても高いことを見出した。Atpgp4のT-DNA tag lineにおいては、根の伸長に遅延が認められるだけでなく、今回、重力屈性が弱くなることを見出した。このことは、根冠でのAtPGP4の強い発現と密接な関係があると思われる。また、胚軸から根にかけて植物体全体で強く発現する類似遺伝子AtPGP19のノックアウトでは、むしろ重力屈性が強くなる現象となっている。AtPGP19はオーキシンの排出に関与していることが報告されているが、AtPGP4はオーキシンの細胞内への取り込みに関与していることから、両遺伝子破壊株で観察された重力への逆の応答には整合性があるとみなされる。またAtPGP4は、根表皮細胞の内、根毛を発生する細胞で発現が明確に低く、しない細胞で高いことが見出された。実際に、Geislerらは最近、atpgp4のノックアウトが根毛の長さを長くすると報告している。 さらに、atpgp4のノックアウトにおいて、どのような遺伝子で発現変動がみられるか、アレイ実験を行った。その結果、2倍という閾値で見た場合、カラースワップのアレイ2枚に共通して、pgp4-1でWTより2倍以上発現が低い遺伝子が21種、発現が高い遺伝子は158種見出された。後者の内45遺伝子は転写因子であった。PINのメンバーは、発現に影響を受けているものの中には見出されなかった。 AtPGP4と最も相同性の高い類似遺伝子にAtPGP21があり、Promoter::GUS植物体などの解析により、これは中心柱で特異的に発現しているABCタンパクであることが判明した。
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