植物の表皮細胞は、まず、気孔系列か非気孔系列かの運命の選択を行う。気孔系列に入れば不等分裂を行い、小さい方の細胞がメリステモイドとなる。メリステモイドは最終的に気孔を形成する孔辺細胞となる。不等分裂の結果として出来る大きい方の細胞は、非気孔表皮細胞になるか、あるいは不等分裂を行って上に述べた過程を繰り返すことにより、気孔と非気孔表皮細胞を作る。メリステモイドや孔辺細胞からは、隣接細胞の不等分裂の分裂面を制御する何らかのシグナルが出ており、これにより隣接した気孔の形成を防いでいる。この仕組みにより、気孔は隣接して形成されることなく、必ず間に一つ以上の表皮細胞が存在する。 私達は、気孔パターニングの制御因子として分泌タンパク質EPF1とEPF2を見いだしている。epf1破壊株では、気孔が隣接して形成される。epf2破壊株では、孔辺細胞を含む表皮細胞の数が増加する。これらのニ重変異株では、表現型は相加的であった。また、EPF1はメリステモイドと孔辺細胞母細胞、孔辺細胞で発現しており、EPF2はメリステモイドとメリステモイド母細胞(MMC)で発現している。EPF1もEPF2も過剰発現すれば気孔の数を減少させ、それらの効果には、TMM(気孔パターニングに働くreceptor like protein)とERECTA-familyが必須であった。マーカー遺伝子を用いた実験から、EPF2過剰発現はMMCへの分化をブロックするのに対し、EPF1過剰発現はメリステモイドを形成する不等分裂を阻害することがわかった。これらのことから、EPF2は最初の運命決定の調節因子であり、MMCとメリステモイドで発現して、気孔系列の細胞の数の負のフィードバックとして働いていること、EPF1は気孔形成において、次に形成される気孔が隣接して形成されることを阻害するシグナルとして働いていることがわかった。
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