研究概要 |
シロイヌナズナの茎頂L1層における遺伝子発現制御には、ホメオドメインを持った転写因子PDF2,ML1が関わる。本研究では、茎頂L1層の確立から表皮細胞分化の分子機構を明らかにするため、PDF2,ML1の機能解析、標的遺伝子の同定をすすめるとともに、これらの転写因子が属するHD-ZIP IV (HD-GL2)ファミリーについて、遺伝子発現パターンとT-DNA挿入変異株の解析からその包括的な機能解明を目指した。 1.HDG1〜HDG12と名付けたHD-ZIP IVファミリーの未解析遺伝子について、T-DNA挿入変異株の解析をすすめた。 (1)HD-ZIP IVファミリー全遺伝子についてT-DNA挿入変異株の確立を完了した。 (2)HDG11遺伝子のT-DNA挿入変異株hdg11-1,hdg11-2にトライコームの分枝増加の表現型を見つけた。最も相同性の高い遺伝子HDG12のT-DNA挿入変異株hdg12-2のトライコームは正常であったが、hdg11-1やhdg11-2との二重変異では分枝増加が強調されたことから、これらの遺伝子がトライコームの分枝調節に関わることを突き止めた。 2.PDF2,ML1,HDG7,HDG9の組換えタンパクを用いて、結合DNA配列をランダムオリゴDNAから選抜し、GCATTAAATGCという標的配列を明らかにした。 3.PDF2に、ヘルペスウィルスのVP16またはショウジョウバエのEngrailedの活性制御領域を融合して、転写活性化因子、転写抑制因子としてそれぞれ機能するVP-PDF2,EN-PDF2を誘導的に発現させる系を構築した。その結果、VP-PDF2を発現した植物に異常は現れなかったが、EN-PDF2を発現した植物では葉の展開異常や器官融合が生じ、PDF2が本来転写活性化因子として機能していることが確かめられた。
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