研究概要 |
DNAメチル化の役割を知るため、DNA低メチル化突然変異ddml (decrease in DNA methylation)で誘発される発生異常を遺伝解析している。このような発生異常のうちの一つである矮性表現型bonsaiは、不安定な劣性形質として遺伝する(Cold Spring Harb Symp Quant Biol 69,139-143)。約1000の染色体を調べることにより、bonsai表現型の原因遺伝子の連鎖解析を精密化し、約200kbの領域にしぼりこんだ。この領域の約40の遺伝子で発現を調べた結果、bonsai系統で特異的に発現が抑制されている遺伝子を一つ見いだした。このbonsai候補遺伝子の2本鎖RNAを発現する形質転換体を作ることにより、候補遺伝子の発現抑制と、それに伴うbonsai類似の表現型が再現された。また、この遺伝子の第一エクソンにT-DNAの入った系統でも、類似の表現型が見られた。これらのことから、この遺伝子の発現抑制が、bonsai表現型誘発の原因と結論した。 ddmlで誘発されたbonsai系統では、この遺伝子の塩基配列は変わっていなかった。一方、遺伝子全体にわたり、メチル化レベルの上昇が見られた。遺伝子発現抑制が世代を超えて継承される、新たなエピジェネティック突然変異と考えられる。現在、ゲノム全体の低メチル化に伴う局所的な高メチル化のおこる機構を、エピジェネティックな制御にトランスに影響する突然変異体を用いて調べている。
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