1)我々は、短日条件下で転写誘導を受けるEhd1遺伝子が、フィトクロム欠損変異体で脱抑制を受け、さらに、青色光による転写誘導を受けることを明らかとした。また、約2kbのEhd1プロモーターをlucレポーター遺伝子につないで、形質転換し、系統を確立、発現解析を行った所、青色光下において、急性的ではなく、恒常的に、転写活性が高くなるが、赤色光による抑制は受けないとの結果を得ている。また、連続暗条件において、Ehd1遺伝子の発現が概日度計の制御を受けることを確認した。今年度は、イネのジベレリン合成系変異体の開花遅延から、イネの花芽形成におけるジベレリンの役割を解析していたが、ジベレリンの変異体で、Ehd1転写レベルの変化を見出した。また、幼苗でのEhd1::lucレポーター遺伝子を用いた解析から、Ehd1の短日条件での発現誘導にもジベレリンが重要な役割を果たしていることを見出した。イネでジベレリンが光周性に関与しでいるのかどうかに関して、現在、解析を行っている。 2)Ehd1の機能ドメインを欠く各種変異Ehd1タンパク質の過剰発現体を作成し、Ehd1による開花促進にレシーバードメインは要らないこと、また、外から添加したサイトカイニンによって、下流にあるA-RRが誘導を受けたサンプルで、Ehd1の有無により、下流のHd3aの発現が変化を受けないこと等を明らかにしている。つまり、Ehd1のレシーバーがサイトカイニンの信号伝達に関与しないことを示唆している。そこで、今年度は、シロイヌナズナのサイトカイニンの信号伝達系のB-RRであるARR1とEhd1のキメラ遺伝子を作成し、そのキメラ遺伝子を過剰発現する形質転換イネを作成し、固定系統を作成した。この系統は、短日では開花を促進し、幼苗においては、サイトカイニン添加により、Hd3aの転写を若干誘導できることを明らかにした。現在、サイトカイニン添加によるイネの開花誘導を解析中である。
|