神経細胞内封入体が各種の神経変性疾患の組織病理学的所見として多く報告されており、封入体は異常構造をとったタンパク質であることが報告されている。病理組織学的検索によりこれらの封入体を構成するタンパク質の多くがユビキチン化というタンパク質分解のための修飾が起きていることが知られている。本研究では、封入体構成タンパク質(ポリグルタミンタンパク質、タウ、α-シヌクレインなど)の安定性を調節するメカニズムとして分子シャペロン系とユビキチン-プロテアソーム系がどのような役割を果たしているのかを検討する。特に、封入体構成タンパク質をユビキチン化させる酵素系であるU-ポックスタンパク質との関係を生化学的に明らかにすることを目的とする。 我々はヒト及びマウスからU-ボックスドメインを含むタンパク質のcDNAをクローニングし、そのE3活性を証明した(U-ボックス型E3)。ほとんどのU-ボックスタンパク質は分子シャペロンとの関係が認められ、U-ボックス型E3はシャペロン依存型E3である可能性が高い。 特に哺乳類のUfd2ホモログであるUFD2aが、ポリグルタミン病のひとつであるマシャド-ジョセブ病の原因遺伝子産物である、神経細胞内に蓄積されるMJD1タンパク質を認識し分解できることを見いだした。また、CHIPが、アルツハイマー病関連タンパク質であるタウや筋萎縮性側索硬化症に関連するSOD1のユビキチン化に関与することを報告した。 また、シェーグレン症候群にみられる自己抗体Ro52/SSAが認識する自己抗原Ro52/TRIM21がユビキチン化酵素であり、B細胞(形質細胞)における分泌型IgG品質管理に関与することを同定した。 Ro52/TRIM21は分子シャペロンであるVCP/p97とともに分泌型IgGの小胞体関連品質管理に関わることを明らかにした。
|