研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)コア蛋白質を肝がん細胞に発現させると活性酸素種の産生、脂質の過酸化を起こし、さらには肝がん(ゲノムの不安定化)を誘発する。コア蛋白質はウイルス粒子の構成成分でありウイルスの複製のために宿主細胞へ作用する必然性は既存の概念からは想定できないため、これらコア蛋白質による細胞毒性のメカニズムは未だ不明である。私たちは、これまでに酵母細胞モデル系でHCVコア蛋白質に細胞内蛋白質の核内輸送阻害活性があることを示してきた(J.Biol.Chem.277,2002)。 本研究では、まず、出芽酵母実験系でコア蛋白質を介した増殖抑制作用、および酸化ストレス発生機構を解明する。出芽酵母内でHCVコア蛋白質発現させた時の遺伝子発現プロファイリングを行なったところ、unfolded protein responsesやDNA傷害剤に類似した遺伝子発現の変動があることが明らかになった。さらに、HCVコア蛋白質制御発現系で発現酵母細胞の増殖が低下する形質を使用して遺伝子欠損ライブラリー(約5,000の遺伝子欠損株)のHCVコア発現に起因する毒性を低下させる、もしくは消失させる遺伝子のスクリーニングを行った(遺伝子欠損により増殖する細胞の取得)。その結果、ミトコンドリアの機能に関するものや、RNA polymerase holo enzyme群のうち特定の遺伝子を単独で欠損した場合に、コア蛋白質による酵母細胞の増殖阻害効果が低減することが明らかになった。
|