研究課題/領域番号 |
17028009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加納 ふみ 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10361594)
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研究分担者 |
村田 昌之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50212254)
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キーワード | 細胞ストレス / 小胞体 / 小胞輸送 / 可視化 / セミインタクト細胞 / 小胞体関連分解 / プロテアソーム |
研究概要 |
細胞内コレステロール排出活性を持つABCタンパク質ABCA1の細胞内小胞輸送過程をGFP可視化し、その輸送キネティックスを定量的に解析する顕微アッセイシステムを構築した。その過程で通常は小胞体に留まったままだが、小胞体ストレスに敏感に反応して小胞体を離脱し形質膜へと輸送される一アミノ酸置換変異体ABCA1-QRを発見した。ABCA1-QR-GFPを恒常的に発現しているstable transfectant(HEK-QR)を樹立し、プロテアソーム阻害剤存在下でその細胞内動態を解析したところ、QR-GFPは小胞体内腔で正確な高次構造の形成が行われないため、小胞体関連分解(ER associated degradation : ERAD)により細胞質へと逆送されて分解されていることが判った。次に、HEK-QRに小胞体ストレス(DTT処理又はタプシガルジン処理など)を負荷したところ、小胞体に蓄積していたQR-GFPはおおよそ30分以内で核周縁領域に移行し蓄積する様子が観察された。間接蛍光抗体法やBFA処理によるゴルジ体構造の形態変化を指標に、この核周縁のオルガネラはゴルジ体であることを明らかにした。さらに、QR-GFPはCOPII依存的に小胞体から小胞化すること、また、小胞化した後QR-GFPはERGIC(ER-Golgi intermediate compartments)を通過しゴルジ体に移行することなどを明らかにした。これらの知見を総合すると、小胞体に蓄積しERAD経路を取っていたQR-GFPは、小胞体ストレス負荷により通常の小胞輸送経路を取って細胞形質膜へと輸送されることが判った。この発見により、同一の膜タンパク質が小胞体内でERAD経路と小胞輸送経路を選別しうることが明らかとなり、この系を利用した小胞体ストレス負荷時に活性化される小胞輸送制御機構解析系を構築できた。
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