GM130とGRASP65が実際in vivoでゴルジ体の均等分配においてどの様な役割を果たしているか、また小胞輸送・分泌経路の調節が、細胞周期の進行にどのような制御シグナルを送っているか、細胞増殖・分化とどのように関わっているかを探る事を目的として研究を行った。GRASP65が間期に血清やEGF細胞の増殖刺激に伴って特異的にリン酸化されることを明らかにした。また、そのリン酸化部位が277番目のセリン(S277)であることを同定した。また、同じリン酸化部位(S277)が、Cdc2/cyclinBによってもリン酸化されることを明らかにした。一つのリン酸化部位が細胞増殖刺激と細胞首位記制御の二種の異なったリン酸化経路でリン酸化される事は、これらの情報伝達経路の刺激がゴルジ体上のGRASP65に収斂していることは、増殖刺激と細胞周期の調節にゴルジ体が重要な役割を果たしていることを示唆している(J.Biol.Chem.2005)。次に、ゴルジ体のシス側に局在し、GM130やGRASP65と共にゴルジ体の構造維持や、輸送の調節に働いている事が示唆されているFinGER3とFinGER4をRNAi法を用いてノックダウンし、これらの機能の解析を行った。FinGER3とFinGER4のノックダウン細胞では、ゴルジ体の断片化が観察され、VSV-Gタンパク質をマーカーとしてゴルジ体を経由して細胞膜へ至る輸送をモニターしたところ、ゴルジ体以降の輸送が遅延していることが明らかになった。この結果は、FinGER3とFinGER4がゴルジ体の形態維持や輸送の調節に重要な役割を果たしている事を示唆している。
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