研究概要 |
アミロイドーシスは生理的機能を持つタンパク質が構造変換を受け、アミロイド線維に重合・沈着し生体に障害を与える『タンパク質ホールディング病』の総称である。我々は『異常構造プリオンの伝播』と類似した『アミロイド線維の伝播』がアミロイドーシス発症の重要な要因であることを示してきた。タンパク質の一生の中で、★アミロイド線維形成と生体への沈着、★アミロイド線維様物質の伝播による外部への発症拡大というアミロイドタンパク質の破綻的後半生の実態を明らかにするために以下の研究を行った。 1)伝播におけるアミロイド線維間クロストーク:モデルマウスを用いてAApoAIIとAAアミロイド線維間での、同種モノマーの線維伸長促進効果、異種のモノマーの線維形成阻害及び線維分解効果を解析し、Self-seeding, Cross-seeding, Cross-competitionの優劣でアミロイド沈着が動的に変異する概念を提唱した。 2)チーターにおけるAAアミロイドーシスの伝播の解析:絶滅危惧種であるチーターは動物園等での飼育・繁殖が行われている。飼育チーターの主要死因はAAアミロイドーシスで、早急な対策が求められている。チーターのAAアミロイド線維を精製し、抗体作成、一次構造決定、遺伝子クローニング等を行った。糞中から分取したAAアミロイド線維がマウスAAアミロイドーシスを誘発することを明らかにし、糞を介した飼育集団下でのAAアミロイドーシス伝播の可能性を示した。 3)試験管内でのアミロイド線維形成機構の解析:ApoA-II(78アミノ酸)の合成部分ペプチドを用いて線維形成のメカニズムと伝播について解析した。C末近傍(48-65)とN末(1-16)の2つのペプチドが関与するユニークな線維形成機構を明らかにし、線維形成条件(pH,添加物質)を変え、生体で形成された線維と同等の伝播力を示す線維の形成を試みた。
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