研究概要 |
I.ペルオキシソーム新生タンパク質の分解機構 メタソール資化性酵母を用い、ペルオキシソームの新生過程において、ペキソファジー(またはオートファジー)によるオルガネラ分解が起こるかどうか調査したところ、メタノール誘導後、5-6時間ぐらいに、ペルオキシソームタンパク質の新生と並行して、ペキソファジーが起こっていることが明らかとなった。また、ペキソファジーで起こる膜新生についてエルゴステロール合成酵素であるAtg26の詳細な機能が明らかとなった(J.Cell Biol, under minor revision)。一方、N-末端がリジンで始まるペルオキシソームタンパク質は、タンパク質発現量が低いことを緑色栄光タンパク質および臨床検査試薬フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを用いて明らかにした。その分解はオートファジーによるものではなく、ユビキチン・プロテオソーム経路によるものであることが、変異株の解析から明らかとなった。現在、ペルオキシソームタンパク質のユビキチン化、ならびにユビキチン化反応部位について検討中である。その他、いくつかの有用異種タンパク質の高生産に成功した。 II.ペキソファジー分解様式の決定機構 ペキソファジーには、膜動態の全く異なる2つのペキソファジー経路、ミクロペキソファジーとマクロペキソファジーがある。そのスイッチングに関する制御機構について解析したところ、細胞内ATPレベルと深い関連性を示すことが明らかとなった(Biosci.Biochem.Biotechnol.2005)。現在、Snf1・Gcn2など、他の制御系とあわせて解析を行う予定である。 III.オルガネラタンパク質新生のタイミング決定機構 ペルオキシソームに局在するオキシダーゼは、反応生産物に過酸化水素を生じるため、巧妙な発現機構の存在がわかってきた。現在までにいくつかの転写因子をクローン化しているが、Kmの異なる2つのオキシダーゼアイソザイムをもつPichia methanolicaで個々のアイソザイムがメタノール濃度に応答して、発現されることが明らかとなった(Yeast 2005)。
|