研究概要 |
VCP/p97はポリグルタミン病の原因遺伝子産物と相互作用する因子として同定された、AAA+ファミリーに属するATPaseである。細胞周期の制御に加え、近年、ERADにおいて重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。しかし、動物個体での発現から機能を検討した研究はまだ非常に乏しい。我々は、VCP/p97およびそのコファクターであるp47,Ufd1,Npl4の特異的抗体をそれぞれ作成し、成体マウスにおける発現をそれぞれ検討した。 VCP/p97はユビキタスに存在する因子であるが、組織レベルの発現解析では、腸管上皮細胞・気管支上皮・腎尿細管といった物質の分泌や吸収に重要な働きをしている細胞で強い発現が見られた。Ufd1やNpl4の発現はVCP/p97に近い様式を示したが、p47は、組織の部位と細胞種により、核に優位に発現してた。 これらの結果は、蛋白質の分泌や物質の取り込みなどの細胞膜が関与した機能にVCP/p97の系が重要な働きを行っていること、さらに、そのコファクターの発現と局在により、VCP/p97の系の機能調節が行われることを示唆している。 また、神経変性疾患の発症メカニズムへのp97/VCPの関与についても解析を進め、細胞内で変性蛋白質が凝集体を形成する過程にp97/VCPのATPase活性が重要な役割を果たすことを明らかにした。すなわち、ATPase活性が低下したVCPを発現させた細胞では、細胞内に凝集体が出来にくくなること、一方、VCPのミスセンス変異を原因とする遺伝病IBMPFDでは、ミスセンス変異によって、VCPのATPase活性が亢進し、さらにこれらのATPase活性が上昇したVCPを発現させた細胞では、プロテアゾーム阻害やポリグルタミンの発現による細胞内の凝集体形成能が強まっていることを明らかにした。
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