植物においてプラスチドは、葉緑体に代表される特徴的なオルガネラで、光合成の他、アミノ酸代謝や脂質代謝、硫黄同化および窒素同化にも重要な役割を担っている。これらの生理機能は、2千とも3千とも言われるプラスチド蛋白質が、適切な時期に、適切な組織・器官において、適切な量、配置されることで維持されている。プラスチドを構成する蛋白質の多くは核ゲノムにコードされており、前駆体として細胞質ゾルで合成された後、プラスチドへと輸送される。この輸送にはプラスチド包膜に存在する蛋白質輸送装置やそれと協同的に働くプラスチド内外の分子シャペロン蛋白質が関与している。葉緑体に代表される植物プラスチドを構成する蛋白質の多くは核ゲノムにコードされており、前駆体として細胞質ゾルで合成された後、プラスチドへと輸送される。この輸送にはプラスチドを囲む2重の包膜(外包膜と内包膜)それぞれに存在する蛋白質輸送装置やそれらと協同的に働くプラスチド内外の分子シャペロン蛋白質が関与している。われわれは、プラスチド外包膜に存在する蛋白質膜透過装置Tocが800kD〜1000kDの超分子複合体として存在していること、構成要素の存在比、そのコアとなる因子について明らかにした。さらに最近、前駆体の輸送中間体を用いた解析により、前駆体がTocを通過した後に相互作用していると考えられる超分子複合体の検出に成功した。 蛋白質の一生の中で、細胞内輸送の問題は、生命活動の基幹に関わる問題であり、現在の細胞生物学の最重要課題のひとつである。不明の点が多いプラスチドへの輸送メカニズムの中でも外包膜の通過後の過程はまだまだ未同定の因子やメカニズムが隠されていると思われる。この過程に関わる新規複合体を解明することで、プラスチド形成に分野だけでなく、蛋白質の一生の全体像の理解という当該領域の推進に貢献できると考えている。
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