研究概要 |
1.カルシニューリン活性のリアルタイムモニタリング:カルシニューリンは細胞内Ca^<2+>により活性化されるタンパク質脱リン酸化酵素で,酵母からヒトにまで保存されたカルシウムシグナル系の中心的分子であり,臓器移植時に用いられる免疫抑制薬の分子標的である。本研究では,生細胞におけるカルシニューリン活性をリアルタイムにモニターするシステムを確立し,分裂酵母には細胞壁の異常を感知するMAPキナーゼに依存した経路と細胞外Ca^<2+>を感知するMAPキナーゼに依存しない経路の2っが存在することを発見した。 2.バルプロ酸(VPA)の細胞内輸送に対する影響:VPAは抗てんかん薬として良く知られており,最近はがん化学療法の奏功性をあげることが報告されているが,そのメカニズムたついては不明である。VPA感受性を示す変異体を単離し,その原因遺伝子を決定したところ細胞内輸送で重要な働きをするVps45をコードする遺伝子だった。さらに,治療濃度に相当する低濃度のVPAが分泌などの細胞内輸送に影響を与えることを発見した。分裂酵母ではVPAを投与すると細胞内輸送が抑制されることで細胞壁に異常を来たし,上記1で述べたMAPキナーゼを介する経路によりCa^<2+>/カルシニューリン系が活性化されることも示した。 3.細胞内輸送で重要な働きを担うRab GDI (GDP dissociation inhibitor)の活性のリン脂質による制御:免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬)感受性と高温感受性を同時に示す分裂酵母変異体を単離し,その遺伝子を決定したところ細胞内輸送で重要な役割を果たすRab GDIをコードしていた。さらに,本変異体の高温感受性を相補する遺伝子としてリン脂質輸送体をコードする遺伝子を単離した。さらに,Rab GDIの活性がリン脂質により制御されていることを明らかにした。
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