研究課題
小胞体でのタンパク質の成熟過程に異常が起こるとシャペロン等の遺伝子が転写誘導される。この現象は小胞体ストレス応答と呼ばれ、酵母や動物でそのユニークな分子機構が詳しく解析されている。一方で植物においては、分子機構、生理的意義ともに不明な点が多い。私たちはモデル植物であるシロイヌナズナから小胞体ストレス応答で誘導される転写因子AtbZIP60を単離した。AtbZIP60は膜貫通領域を有し、膜貫通領域を除いた部分を一過的に発現させると、BiPなどの小胞体シャペロンのプロモーターを活性化した。またこの部分にGFPを連結したキメラタンパク質は核に局在した。これらのことからAtbZIP60タンパク質は不活性な膜結合型として存在し、小胞体ストレス依存的にプロテオリシスを受け核へ移行し、BiP等の小胞体シャペロン遺伝子の転写を誘導すると仮定した。平成18年度はこの仮説を証明するために抗AtbZIP60抗体を作製しタンパク質の挙動を調べた。その結果、全長のAtbZIP60は小胞体に局在し、ツニカマイシンやDTTなどの小胞体ストレス誘導剤に処理により、切断型AtbZIP60が検出された。また、この切断型AtbZIP60は核に局在した。以上の結果から、上記の仮説が証明された。続いてAtbZIP60タンパク質の切断機構について調べた。動物の小胞体ストレス応答の制御に関わる転写因子ATF6は、ゴルジ体に存在するS1P、S2Pという2つのプロテアーゼにより切断される。そこで、シロイヌナズナのゲノム情報から、S1P、S2Pのホモログと考えられる遺伝子の遺伝子欠損株をそれぞれ入手し、AtbZIP60の小胞体ストレス依存的な切断を調べたところ、AtbZIP60は野生型と同様に切断された。このことから、S1P、S2PはAtbZIP60の切断には関与していないことが強く示唆された。
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Plant Cell Physiol. (印刷中)
Biochem Biophys Res Commun. 346(3)
ページ: 926-930