細胞内小器官のひとつであるペルオキシソームのタンパク質は細胞質で合成され、複雑なマシーナリーによりマトリックスへと輸送される。我々は、ペルオキシソームのプロテオーム解析の過程で、ペルオキシソーム特異的ATP依存性プロテアーゼ(Lonプロテアーゼ)を発見した。本研究においては、Lonプロテアーゼのペルオキシソーム生成とその維持における役割を明らかにすることを目的とし、本年度は特に細胞における過剰発現、ノックアウトによるペルオキシソーム生合成への影響を中心に解析した。Lonプロテアーゼのペルオキシソーム・マトリックスタンパク質輸送における役割を解析するために、Lonプロテアーゼの様々な変異体を293細胞に発現させ、そのペルオキシソーム形成への影響を調べた。その結果、野生型Lonプロテアーゼを過剰発現させると、肥大化したペルオキシソームが見られ、また密度が上昇し、ペルオキシソーム・マトリックスタンパク質の取り込みが亢進していることが明らかとなった。また、ATPase活性、プロテアーゼ活性を欠く変異体ではこれらの効果が見られないこと、さらにATPaseドメインを丸ごと欠損した変異体では逆に取り込みが抑制されるドミナントネガティブ効果をしめすことなどから、Lonプロテアーゼはマトリックスタンパク質のペルオキシソームへの取り込みに直接関与しているらしいと考えられた。また、β酸化系酵素やカタラーゼなどマトリックスタンパク質の切断やβ酸化活性にも影響が見られた。
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