1)misfoldingにともなう小胞体内から細胞質への排除の機構を、蛍光相関分光法(FCS)を用いた1分子動態解析により観察した。これは細胞質拡散と小胞体内での隔離された環境での拡散が、自己相関関数の減衰曲線上での差異として現れることを利用する。局在変化は、プロテアソーム阻害MG132により引き起こすことができる。この結果、MG132添加後に減衰曲線の左方シフトが観察され、これは細胞質への特異的抗体注入により消失したので、この変化を追うことで局在変化を知ることが可能であることを示した。現在、この変化を生合成後からの分子の成熟化と絡めて検出する方法を検討中である。 2)小胞体タンパク質の網羅的な発現抑制を行うsiRNAライブラリを作成し、これを温度感受性の成熟化を行うtyrosinase-YFPを用いて、成熟化に影響を与えるものを検索した。今回、100個のtarget遺伝子産物の発現抑制により、9個のtargetが見つかった。このうち、6個はfoldingやERAD等、分子の構造形成と関係すると予想され、3個は、これまで全く予想されなかった種類の分子群であり、拡散解析より、ダイナミクスのレベルで成熟化を制御する可能性が示唆された。これらについて、小胞体内での拡散と、COPIIを経由する輸送との関連について、解析を進めている。 3)分泌系初期過程に発現する新規Q-SNAREであるD12について解析を行い、これが、定常状態においては、初期過程、特に小胞体に主に存在するにもかかわらず、リソソームでの分解酵素の正しい成熟化に関与することを報告した。
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