研究概要 |
鉄代謝制御因子(IRP2)は細胞内鉄濃度が高い場合には、生成されたヘムに結合したのち酸化修飾され、ユビキチン・プロテアソーム分解される。我々は、酸化修飾されたIRP2を認識するユビキチンリガーゼ(E3)として、RING型E3のHOIL-1(Heme-oxidized IPR2 ligase-1)を同定した。IRP2の鉄(ヘム)依存性分解には相同蛋白質であるIRP1にはない73残基の挿入領域(IDD,iron dependent degradation domain)が重要であると明らかにされているが、IRP2の鉄濃度センサー機構やHOIL-1によるIRP2品質管理の詳細は不明であった。そこで今回、まずIRP2の鉄(ヘム)依存性分解におけるIDDの役割を明らかにするため、IRP2からIDD領域を欠失した変異体およびIRP1にIDDを導入した変異体で鉄濃度依存性分解を調べたところ、IDDに依存し変異体のプロテアソーム分解がみられた。また、IRP2やIDD領域を3価のヘムと反応させるとCys配位に特徴的なソーレー帯をもつ分光スペクトルを与え、IDD領域のCys^<201>が軸配位子として機能した。さらに、2価のヘムはHis^<204>に配位した。Cys^<201>-Pro-X-His^<204>配列は他のヘム結合蛋白質にも見られるヘム制御モチーフ(HRM)に類似しており、このCysとHisの両方をAlaに置換するとIRP2のヘム依存性分解は見られなかった。また、HOIL-1はIRP2のHRMを認識し、特にIRP2に特徴的なHis^<204>が重要な役割を果たしていた。以上の結果はIRP2のIDD領域に存在するヘム制御モチーフがヘムとの結合したのち、分子内に酸化修飾がおこるとHOIL-1がHRMを認識しユビキチン・プロテアソーム分解へ導くことを示す。
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