研究概要 |
本研究では、これまでに明らかにした小胞体への膜タンパク質の組み込み様式をもとに、いくつかの代表的なマルチスパン膜蛋白質のすべての膜貫通セグメントの膜内配置機構を徹底的に解析した。アミノ末端側を膜透過させる1型シグナルアンカー配列が、予想外に長いドメインを膜透過できることを明らかにし、その際に、燐酸高エネルギー化合物や小胞体内腔の熱ショック関連タンパク質(hsp70,Bip)は関与せず、リボソームが膜透過自体に寄与し、膜透過の駆動力が初期段階とその後の連続的段階とで異なることを明らかにした。また、われわれが明らかにしてきた、内在性シグナルアンカー配列による他律的な低疎水性セグメントの膜組み込みモデルを支持する、新たな事例を見出した。並行して、疎水性度の高い膜蛋白質が小胞体への標的化を回避し、ミトコンドリアやペルオキシソームなどの分泌経路以外のオルガネラに標的化するためのシグナル配列を解析し、膜蛋白質に特化したミトコンドリア標的化シグナルを明らかにした。このシグナルは小胞体への合成に共役した標的化を抑制し、ミトコンドリアへの合成後の輸入を実現するものであった。さらに、より制御しやすいポリペプチド鎖膜透過制御実験系を確立し、小胞体トランスロコン内には複数のシグナル配列と複数の親水性膜透過途上セグメントが収容されること、膜透過制御要因であるポリペプチド鎖上の正荷電アミノ酸残基が予想外に長距離での効果を発揮できことなどを明らかにしつつある。
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