研究課題
オートファジーは、ダイナミックな膜形成(オートファゴソーム形成)を伴う真核生物に保存された蛋白質分解システムである。酵母などの下等単細胞生物においては、オートファジーは飢餓に応答した生存戦略が唯一の働きと考えられてきた。しかしながら、我々は条件付きにオートファジーが不能となるマウス(Atg7^<Flox/Flox>を作製、解析し、肝臓におけるオートファジー不能マウスが栄養飢餓時の蛋白質分解阻害のみならず定常状態においてもユビキチン陽性封入体や異常オルガネラの蓄積を引き起こすことを明らかにした。さらに、脳特異的オートファジー欠損マウスを作製し、そのマウスは反射異常、協調運動障害などの神経変性疾患様症状を示し、その神経細胞内には加齢と共にユビキチン陽性封入体が蓄積すること、大脳皮質、海馬、小脳順位層において神経細胞死が起こることを見いだした。これらのことは、オートファジーは栄養状態が十分に供給された状況にあっても恒常的に活動し蛋白質の代謝回転を担うこと、その破綻は神経変性疾患を引き起こすことを示している。あまた、超感度プロテオミクス法により、オートファジーにより選択的に分解される分子p62を同定した。この分子はC末端Ubaドメインを介して。ビキチン鎖と結合する。興味深いことに、この蛋白質はアルコール性肝炎や多数の神経変性疾患において検出される封入体の主要構成分子である。オートファジー不能細胞において、p62は異常蓄積しp62-ユビキチン陽性の封入体を形成した。このことは、オートファジーによるp62を介したユビキチン化タンパク質の分解が封入体形成を抑制することを強く示唆する。
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