研究課題
細胞内すべての小胞輸送経路において、輸送小胞の形成は低分子量GTPaseによって制御されていると考えられているものの、その制御機構は長い間謎であった。その理由の一つとして、これまでの細胞から分画したオルガネラを用いたin vitro実験系では、さまざまな種類のGTPaseが混在しているため、輸送小胞形成過程で機能するGTPase機能のみを切り離して解析することが非常に困難であったことが挙げられる。これまでに開発した、小胞体からのCOPII小胞形成を必要最小限の精製因子で再現する完全再構成系を用いることにより、COPII小胞形成反応で中心的な役割を担っている低分子量GTPase Sar1pのGTP加水分解の様子を直接測定することが可能となった。この実験系を発展させ、COPIIコートにYFP、プロテオリポソーム上の輸送されるタンパク質にCFPを融合させ、COPII小胞形成過程におけるCOPIIコートと輸送されるタンパク質との分子間相互作用をCFP-YFP間のFRETを指標としてリアルタイムで追跡することのできる実験系を開発した。これらのオリジナルな実験系を用いて詳細に解析を行った結果、Sar1pはGTP加水分解のエネルギーを利用して、輸送小胞に取り込むタンパク質の選別を行っているという現象を見いだすことができた。また、COPII小胞形成の完全再構成系を人工脂質平面膜上に再現し、1分子観察用の全反射顕微鏡下でCOPII小胞形成過程における輸送されるタンパク質の動態を1分子レベルで可視化することを試みている。これまでに、平面膜上の蛍光標識された輸送されるタンパク質の二次元拡散がSar1pの添加によって変化する様子を1分子レベルで計測できるまでに至っている。
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Nat.Struct.Mol.Biol. 12
ページ: 167-174
J.Biol.Chem. (印刷中)