新たに合成された分泌タンパク質や各オルガネラで機能するタンパク質は、まず小胞体にターゲットされ、高次構造を形成した後、輸送小胞とよばれる膜小胞によって媒介される小胞輸送によって細胞内の分泌経路を移動していく。輸送小胞が形成される際には、輸送小胞につめこむタンパク質と、ドナーとなるオルガネラにとどまるタンパク質との厳密な選別が行われている。この一連の反応でとくに重要な鍵を握るのが、輸送小胞を被覆するコートタンパク質と低分子量GTPase群である。昨年度までに、輸送されるタンパク質を再構成したプロテオリポソームに、精製したコートタンパク質と低分子量GTPaseを加えて、精製因子のみにより小胞体からの輸送小胞形成反応を再現する完全再構成系を構築して実験を行ってきた。本年度はこの実験系を用いて、小胞体からの輸送小胞形成に関わる因子、Sed4pの解析を行った。Sed4pは出芽酵母中で欠損させると、輸送活性が著しく低下するものの、その機能については全く明らかにされていなかった。完全再構成系を用いて解析を行ったところ、Sed4pは輸送小胞形成過程において必須の因子であるヌクレオチド交換因子と非常に高い相同性をもつものの、ヌクレオチド交換活性は検出できなかった。しかし、Sed4pは小胞体からの輸送小胞形成に関わる低分子量GTPaseとヌクレオチド型依存的に直接相互作用することを見いだした。また、輸送小胞形成過程で機能している低分子量GTPaseのGTPase活性を促進するという現象を明らかにした。
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