研究概要 |
分化誘導に伴う核-細胞質間タンパク質輸送担体importinβ様分子の遺伝子発現・タンパク質量変化の解析 現在、ヒトのimportinβ様分子は少なくとも21種類あることが報告されている。そこで、これら全21種類の遺伝子クローニングを行った。 実験系として、ヒト急性前骨髄性白血病由来細胞株HL-60を用いた。HL-60細胞は、様々な化学物質による分化誘導が簡便であり、マクロファージ、顆粒球など複数の分化方向性をもつ。Phorbol12-myristate 13-acetate (PMA)によりマクロファージ様への分化誘導を行い、importinβ様分子群、またmRNA核外輸送に寄与するNXF1と幾つかの核膜孔複合体構成因子の遺伝子発現量の変動をリアルタイムPCRにより解析した。その結果、PMA処理により、transportin,NXF1,RanBP2遺伝子発現量が少なくとも2倍以上に増加していることが判った。また、importin 4b,CAS,Nup107など複数の遺伝子発現量が1/2以下に減少していることが明らかとなった。これらの結果は、分化誘導に伴い特定の輸送経路流通の促進や抑制が行われている可能性を示唆している。また、核-細胞質間分子流通の場である核膜孔を構成する遺伝子の発現量変化も観られたことから、分化に伴う核膜孔の数や分布も変化していることが考えられる。 さらに、血清飢餓による増殖停止から血清添加による増殖開始における遺伝子発現変化を同様に解析したところ、RanBP6の発現抑制が観られた。RanBP6は機能未知であることから、細胞の増殖・停止における機能を解析し、その輸送基質の同定を行う予定である。 以上の結果から、細胞機能変化に伴い、細胞は、その機能発現・維持に最適な核-細胞質間のタンパク質輸送システムを再構築している可能性が考えられ、今後の解析課題である。
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