運搬体分子importinβファミリー分子によって担われる多様な輸送経路が細胞内には存在する。これらの輸送経路を細胞がどのように適切に整備し、その細胞機能発現に利用しているのかを明らかにすることが本研究目標である。 昨年度に引き続き、HL-60細胞の分化誘導に伴う運搬体分子群の遺伝子発現変化を解析した。レチノイン酸による顆粒球への分化誘導によって、各importinβファミリー分子の遺伝子発現変化が、マクロファージへの分化誘導の場合と大きく異なっていることを明らかにした。これらの結果は、分化の方向性によって、細胞内の輸送経路網が適切に再編成されること示すものであると同時に、特定の輸送経路が個別の細胞機能発現制御に重要な役割を持っている可能性を示唆するものである。 各輸送経路の機能解析を進めるため、輸送基質同定システムの確立に着手した。細胞抽出液から疎水性カラムで運搬体分子群が容易に吸収出来ることを確認した。この運搬体分子欠損細胞抽出液と各運搬体分子のリコンビナントタンパク質を使用することで、セミインタクト細胞によるin vitro輸送系において、各運搬体分子による核-細胞質問分子輸送を再構築出来た。このアッセイ系は、輸送基質がどの運搬体分子によって運ばれるかという核-細胞質問分子流通の基本情報整備に非常に有効である。また、得られた情報は、様々な生命機能解析に有益であることが予測され、非常に発展性があるものである。
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