研究課題
オートファジーはリソソームを分解の場とする、細胞質成分の非特異的な分解システムである。私達は、全身のオートファゴソームが蛍光標識されるモデルマウスを作製し、オートファジーの活性は通常は低いものの、絶食時の成体マウスや出生直後の新生児の全身で顕著に誘導されることを示した。新生児は経胎盤栄養の突然の遮断による生理的な飢餓状態ある。そこでオートファジー不能マウス(Atg5欠損マウス)を作製したところ、このマウスは出生直後に深刻な栄養不良に陥ることが明らかとなった。すなわち、オートファジーは、栄養飢餓時に細胞が自身の一部を分解し栄養素であるアミノ酸を内因的に供給するための重要な生理的機構であると考えられた。一方で、オートファジーは必ずしも誘導されなくとも恒常的に低レベルでおこっている減少である。そこで、この恒常的オートファジーの意義を知るために、Atg5ノックアウトマウス新生児の細胞内異常タンパク質の蓄積を解析した。その結果、このマウスでは神経や肝細胞内にユビキチン陽性のタンパク質凝集体が蓄積していることが観察された。これは胎生期の低いレベルのオートファジーも、細胞内タンパク質の品質管理として重要な働きをしていることを示している。さらに神経特異的Atg5ノックアウトマウスを作製したところ、このマウスは4週目頃より神経変性疾患様の運動機能異常を呈するようになり、広範囲の神経細胞内にユビキチン陽性封入体が観察された。以上のことから、誘導されるオートファジーは飢餓適応として、基底レベルの恒常的オートファジーは細胞内品質管理機構としてそれぞれ異なった生理的重要性をもつものと理解される。
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