細胞内における主要なたんぱく質分解酵素であるプロテアソームの分子集合機構の解明に成功した。プロテアソームは、標的たんぱく質を分解するための目印となるユビキチンと連携して、多様な生体反応を迅速に、順序よく、一過的にかつ一方向に決定する合理的な細胞内装置として生命活動に必須な役割を果たしている。プロテアソームは、分子量250万、総サブユニット数約100個から構成された生命科学史上もっとも巨大で複雑な酵素複合体であるが、この複合体がどのようにして形成されるか、は全く不明であった。今回、プロテアソームの分子集合反応を促進する新しい分子シャペロンとしてPAC1/PAC2(Proteasome Assembling Chaperone)複合体を発見し、プロテアソーム形成の分子機構の解明に成功した。現在、プロテアソームとそのパートナーであるユビキチンから構成されたたんぱく質分解装置の異常を原因とするガン・免疫疾患・神経疾患などの難治疾病の発症が急増している。これらの状況を鑑みると、本研究成果はプロテアソーム研究に残された最大の謎、即ちその分子集合機構を解くことによって、細胞内におけるプロテアソームの動態を知り、引いては生命を理解するための新しいパラダイムを構築することに大きく貢献すると思われる。そして本研究は、基礎的な学術的成果に止まらず、細胞内たんぱく質分解の異常によって発症する病気の解明に大きく貢献することが期待される。すなわち、本研究課題の発展は、ヒトの健康と長寿を守る科学に大きく成長する可能性が期待される。
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