研究概要 |
小胞体は蛋白産生の場所であり、細胞の根幹をなす細胞内小器官である。その形態は大変に特徴的で、細胞質全体に広がる網状構造を示す。それらの構造は下等動物から哺乳類まで幅広く見られることから、その複雑な構造はその機能と密接に結びついていると考えられる。 そこで本研究では、以下の点について明らかにすることを目的とする。 I.小胞体の特徴的な網状構造がどの様に形成・維持されるのか。 II.その構造が機能とどの様に関連しているのか。 本年は、上記の内、特にIについて研究を進めた。以下、具体的に述べる。我々は先に細胞分裂期終期での小胞体・ゴルジ体の再構成に特化した膜融合機構p97/p47経路の発見していたが(Nature, 388,75-78,1997 ; J. Cell Biol, 159,855-866,2002)、この程さらに新規膜融合機構を発見することに成功し、p97/p37経路と命名した。この新規膜融合経路は、細胞間期での細胞内小器官の維持に働き、現在の所、小胞体・ゴルジ体の維持に働いているを明らかにしている。細胞間期の細胞に抗p37抗体をマイクロインジェクションすると、小胞体の網状構造は失われた。この経路の必須因子を探索したところ、我々が先に発見した小胞体形成因子VCIP135も必要とすることが分かった。興味深いことに、p97/p47経路がVCIP135の脱ユビキチン活性を必要とするのに対して、この新経路はその活性を必要としなかった。
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