UV光の照射によるTiO_2表面の超親水性と超撥水性の機能発現が藤嶋・橋本らにより報告された以来、広く注目されている。しかしながら、その広い応用性とは対照的に、分子レベルでその機構発現については未だ解明されていない。そこで、本研究では、TiO_2表面の超親水性及び超撥水の機能発現機構を明らかにするため、界面の分子構造に極めて敏感である和周波発生(SFG)測定により、超親水或いは超撥水が発現すると同時に、TiO_2薄膜の表面における分子構造の動的変化を分子レベルでその場測定を行い、TiO_2薄膜の光触媒活性とその界面分子構造との相関の解明を目指す。 ゾルゲル法により、基板表面に透明なTiO_2薄膜の作成に成功した。TiO_2表面の超親水発現機構の一つとされる光誘起酸化分解反応の機構を調べるために、自己組織化法またはLB法により、オクタデシルトリクロロしラン(OTS)または長鎖飽和脂肪酸の単分子膜を表面汚れのモデル層としてTiO_2表面に構築し、UVで照射しながら、有機単分子膜の吸着率や界面分子構造の変化をSFGによりその場測定した。OTS単分子膜の場合、UVが照射すると、分子末端のCH_3に由来する三本のバンドが減少すると同時に、CH_2のバンドも観測されるようになった。約2分で、CH_2のSFGピーク強度がCH_3のピーク強度を超えたことが分かった。このことから、TiO_2表面の高い光触媒酸化活性により、OTS膜の秩序的な構造が壊され、多くのGauche欠陥の生成を示した。約7分でCH_2のピークも最大値となった。その後、CH_2のピーク強度も減少に転じた。約15分では、C-H由来のSFGピークがほぼ全部消失した。一方、OTSの水接触角は約110度から、UV照射とともに、ゆっくりと低下し、約7分で照射では約100度まで減少した。その後、その速度が急に増加し、約20分で完全に親水性となった。UV照射に伴う接触角の二段階の減少はCH_2のSFG強度の変化と対応した。接触角が100度ほどで高い数値であるにもかかわらず、膜の分子構造と配向がすでに大きく変化した。この光誘起酸化過程に伴うTiO_2の水分子の構造変化について、長鎖飽和脂肪酸の単分子膜で得られた結果を比較・検討した。
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