SiO2被覆CdSナノ粒子にサイズ選択的光エッチングを適用し、照射単色光波長を制御することにより、SiO2シェル内部に形成される空隙サイズを精密に制御できることを見いだした。本研究では、この空隙をナノサイズのフラスコとして用い、さらにコアであるCdSナノ粒子の光触媒反応を利用して、シェル内部に金属ナノ粒子を光析出させることにより半導体および金属ナノ粒子を集積化した。 488nmの波長を持つ単色光を用いてサイズ選択的光エッチングを行うことにより、内部に空隙をもつSiO2/CdS粒子を得た。シアン化金(I)カリウムを含むメタノール-混合溶媒中に、得られた粒子を分散させ、アルゴン雰囲気下で水銀ランプ光を照射することにより、金(Au)ナノ粒子を光析出させた(SiO2/CdS-Au)。さらに粒子を硫酸水溶液に分散させ、CdS粒子を除去した(SiO2/Au)。 Auナノ粒子の析出に伴い、500nmよりも長波長側に、Auの表面プラズモンに由来するブロードな吸収が見られ、その強度は金の析出量に比例して増加した。一方、SiO2/CdSに見られる300〜500nmのCdSナノ粒子の吸収の強度は、Auナノ粒子の光析出により大きく減少した。これは、CdSとAuの間の電子的な相互作用のためと考えられ、SiO2シェル内部にCdS-Auナノ接合が形成されたことが示唆された。また、CdSナノ粒子の化学エッチングによりその吸収ピークは消失したが、Auナノ粒子の表面プラズモン吸収にはほとんど変化がなかった。このことは、SiO2/CdS-AuとSiO2/Auに含まれるAu粒子がほぼ同じ大きさであることを示しており、硫酸によるCdSの化学エッチング処理を行ってもAuナノ粒子のサイズ分布に変化が無いことが示唆された。
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