これまでに、SiO2被覆CdSナノ粒子にサイズ選択的光エッチングを適用し、照射単色光波長を制御することにより、シェル内部に形成される空隙をもつジングルベル型構造体(SiO2/CdS)を作製している。本研究では、SiO2/CdS粒子を光触媒として用いてニトロベンゼンの光還元反応を行い、生成収率および分布に対する光触媒のナノ構造の影響を評価した。SiO2/CdSを含む懸濁液に光照射を行ったところ、ニトロベンゼンが還元され、ニトロソベンゼン、アニリン、アゾキシベンゼンおよびアゾベンゼンが生成した。さらにそれらの生成量は光照射時間とともに増加したことから、SiO2/CdSが光触媒として働くことがわかった。種々の波長でサイズ選択的光エッチングを行い、得られたSiO2/CdS粒子の光触媒活性を測定した。未担持CdS光触媒を用いた場合は、ニトロソベンゼンが主に生成した。一方、Rh担持光触媒を用いると、いずれの場合もアゾキシベンゼンが主生成物として得られた。さらに主生成物の生成量は、いずれの場合も粒子サイズの減少とともに増大する傾向を示した。これは、CdSナノ粒子中に光生成した電子・正孔の還元力・酸化力が、粒子サイズの減少にともなう量子サイズ効果によって増大したためと考えられる。また、SiO2/CdSの拡散反射スペクトルは、光触媒反応前後でほとんど変化しなかった。このことから、SiO2シェル構造は光触媒反応後においても破壊されることなく安定に存在し、その内部に存在するCdSコアの凝集を抑制することが示唆された。
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