ポリフィマーナトリウムは現在光線力学的療法に用いられている薬剤であるが、投与後、約4週間の遮光が必要であるとされており、患者への負担が大きく、解決すべき問題となっている。我々は最近、色素としてスチルベンを導入したデンドリマーにおいて、光励起による一重項酸素発生効率はデンドリマーの世代に依存することを見出している。すなわち、第1世代より第4世代デンドリマーのほうが、一重項酸素発生効率が1.3倍ほど高かった。そこで、デンドリマーの新たな光機能界面への展開の一環として、光線力学的療法の新たな治療薬にデンドリマーを用いることを考えた。現在、より長波長での励起が可能な色素であるフタロシアニンをコアとした、脂溶性および、水溶性デンドリマーの合成が終了している。デンドリマーにポルフィリンやフタロシアニンを導入した化合物は、純粋な単一分子量のものとして得ることが出来るので、薬剤として用いる場合、精度が高くなり、品質が統一されると考えられる。脂溶性フタロシアニンデンドリマーは、THF等の有機溶媒へ高い溶解性を示した。KOHでの加水分解により得られた水溶性フタロシアニンは、アルカリ条件化で水溶性を示した。これまでに報告されている低分子のフタロシアニンでは、水溶液中で分子同士が会合してしまい、有機溶媒中と大きく異なる吸収スペクトルを与えるが、今回合成したフタロシアニンデンドリマーでは、有機溶媒中のものに似た形状の吸収スペクトルが得られた。これはデンドロン部位により立体障害が生じ、水中で分子間の会合が抑制されることが原因であると考えられる。
|