(1)光化学系I反応中心一次電子供与体P700のレドックス電位の生物種依存性 これまでに確立した分光電気化学的測定手法により、P700レドックス電位E^<01>の生物種依存性を見出してきた。E^<01>が生物種によって異なる要因には、(1)P700と周辺アミノ酸残基との静電相互作用、(2)P700自身の分子間(Chlα-Chlα'間)の相互作用、の2つが考えられる。これらを検証するため、P700周辺アミノ酸残基の帯電性がE^<01>に及ぼす影響、およびP700自身の立体構造の違いとE^<01>の相関について調べた。その結果、高等植物・緑藻とシアノバクテリアを比べると顕著な違いが現れ、P700レドックス電位の生物種依存性の要因が示唆されたが、数種にわたるシアノバクテリアの違いについては見出すことができなかった。 (2)光化学系II反応中心レドックス電位測定 現象(光照射による酸素発生)としてはもっとも明白ながら、電位がきわめて高いため(推定+1.2〜1.3Vvs.SHE)いまだ実測例のないPSII複合体についても、PSIと同様な手法によりP680レドックス電位の直接計測を目指す。そのためにはまず、+1.0Vvs.SHE以上の高い電位領域において電子メディエーターを迅速に平衡状態に到達させるような電極系の開発が必須である。これまでにダイヤモンドメッシュ電極の開発とRu系メディエーターの検討を行ってきたが、すみやかな酸化還元応答が観測され、高い電位領域を測定可能とする電極系を実現した。しかし、この電極系をPSIIに適用して分光電気化学測定を行ったところ、PSIの場合(E^<01>_<p700/p700+>=〜+0.48V)と異なり、アンテナクロロフィルの不可逆酸化(+0.8V〜)によりP680の酸化還元挙動を追跡するのが難しいことが分かった。
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