電子伝導性の液晶物質とTiO_2との複合材料系が示す光電子物性を明らかにするため、コーティング法によるTiO2薄膜の作製条件を検討し、TiO_2/液晶性有機半導体の積層構造(ITO/TiO2/Biphenyl系液晶/Al)を作製した.この試料を用いて、定常暗・光電流特性、および、過渡光電流測定から、TiO_2/液晶界面の電気的特性、特に、光キャリアの注入特性について検討を行った。 作製したセルの光電流の測定からTiO_2の光吸収に対応して光電流が観測され、TiO_2で光生成されたキャリアがBiphenylへと注入されていること、光注入されるキャリアは正の電荷に限られ、これは、TiO_2のバンド構造とBiphenylのHOMO、LUMO準位の相対的な準位から説明できること、注入される電荷量は、SmE相、SmB相、等方相による違いが見られ、配向秩序が界面における電荷注入に大きな影響を与えていることを明らかにした. TiO_2からの電荷注入を利用して液晶物質(Biphenyl系液晶)の電荷輸送特性の評価を行ったところ、10^<-3>cm^2/Vsの移動度を示すことが分かった.この物質の移動度には、従来の液晶物質の電荷輸送特性とは異なり、電場・温度依存性が見られた。この振る舞いがBiphenyl系に特有なBulk特性によるものか、TiO_2/液晶界面特性によるものであるかは、本研究の結果からは判断できない。今後さらに検討が必要と考えられた。
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