液晶の分子配向の異方性と電荷輸送特性の評価 前年度、確立したITO/TiO_2/Biphenyl系液晶/Alセルの作製を利用して、材料のBulkによる光吸収を利用したTime-of-flight法による電荷輸送特性の評価では従来困難であった液晶分子の垂直、および、水平配向の違いによる電荷輸送特性の異方性について、TiO_2から液晶相への電荷注入を利用してTime-of-flight法により検討を行なった。測定には、異なる分子長を持つBiphenyl誘導体を液晶分子に選び、液晶分子が基板に対して、水平、および、垂直に配向したITO/TiO_2/液晶物質/Alセルを作製しTOF法による過渡光電流を測定して、その輸送過程を評価した。その結果、分子長が長いBiphenyl液晶では測定可能な時間領域(数mm厚のセルで10^5V/cmの電界強度で100ms)では、過渡光電流の波形には正孔の走行を示す肩は現れず、移動度は10^<-7>cm^2/Vs以下と見積もられた。一方、分子長の小さいbiphenyl液晶では、等方(液)相でイオン伝導によると考えられる1×10^<-4>cm^2/Vsの移動度が観測され、SmB相、SmE相では、移動度はそれぞれ4×10^<-6>cm^2/Vs、1×10^<-6>cm^2/Vsと見積もられた。このSm相での移動度は、等方相に比べ2桁小さく、共に電場依存性が見られ、かつ、分子長に依存した。この結果から、伝導は、正孔による電子性伝導であると結論した。Sm層内での正孔の移動に対応する水平配向セルの移動度はSmB相、SmE相で4×10^<-3>cm^2/Vs、10^<-3>cm^2/Vsで、この移動度の違いは各配向の違いによる分子間距離の違いに対応し、異方性比は二つの配向における分子間距離から予想されるHopping伝導による移動度の違いと良い対応が見られる事を明らかにした。
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