研究概要 |
現在酸化チタン(TiO_2)ナノ粒子を利用して、色素の分光増感を利用する色素増感太陽電池の研究が活発に行われている。近年、半導体量子ドットは有機色素に無い特色を持つため、この系の分光増感機能を利用する光電変換の研究が注目されている。本研究では、(1)表面形態の異なるTiO_2光電極の形成と評価、ならびに(2)半導体量子ドット吸着と過渡応答特性評価を対象として光エネルギー変換における緩和機構の解明を行うことを目的とした。 (1)表面形態の異なるTiO_2光電極の形成と評価 本研究ではフラクタル構造、粒径の異なるナノ粒子複合系、結晶構造の異なるナノ粒子複合系、ナノチューブ・ナノワイヤー複合系、フォトニック結晶系の作製を行った。構造評価(XRD,SEM,TEM)を行い再現良くこれらの系を形成する作製条件を見出した。フォトニック結晶形成では、従来よりも簡便・安価でかつ迅速に形成出来る新手法を開発した。この系に光透過・反射スペクトル評価を適用し、ハニカム構造の違いによりフォトニックバンドギャップが規則的に変わることを確認した。 (2)半導体量子ドット吸着と過渡応答特性評価 半導体量子ドットとして化合物半導体CdSeを適用し、反応溶液中で化学吸着させる手法を用いて形成を図った(反応温度と反応時間の制御)。ここで、量子ドット系における光エネルギー緩和過程の評価は、光電変換効率と相関があるため重要である。本研究では、電子と正孔の初期注入状況を評価するため、無輻射緩和を反映する過渡回折格子法、輻射緩和を反映する過渡発光法を適用した。本年度から超短パルスレーザ系が導入されたため、初期注入状況の評価が可能となった。上記の(1)で形成された光電極系に吸着されたCdSe量子ドットからの正孔移動は表面形態には大きな依存性を示さず数ピコ秒の高速緩和を示したが、電子移動は表面形態と吸着条件に大きく依存することを見出した。
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